日本医師国家試験117F10
膀胱の蓄尿症状はどれか。2 つ選べ。
正解:a, e
AI解説
蓄尿症状とは膀胱が尿を貯留する機能に関連する症状を指します。蓄尿期と排尿期の症状を区別することが重要です。蓄尿症状の代表的なものは「尿意切迫感」「頻尿(昼間頻尿・夜間頻尿)」「切迫性尿失禁」です。一方、排尿症状(排尿期症状)は「尿勢低下」「排尿遅延」「腹圧排尿」など尿を排出する過程の問題です。
本問を解くには、まず各選択肢を「蓄尿期」と「排尿期」に分類する必要があります。蓄尿期の症状は膀胱壁の伸展刺激や過活動膀胱が関連し、排尿期の症状は下部尿路閉塞(前立腺肥大症など)や膀胱収縮力低下が原因となります。夜間頻尿は「就寝後の排尿回数増加」という蓄尿機能の異常ですが、心不全や睡眠障害など全身性疾患との鑑別が必要な点も重要な背景知識です。
正解。尿意切迫感は突然我慢できない強い尿意が生じる蓄尿症状の代表です。過活動膀胱や膀胱炎で特徴的にみられ、蓄尿期の膀胱壁の過剰収縮や知覚過敏が機序として考えられます。国際禁制学会(ICS)の定義でも蓄尿障害の主要症状と位置付けられています。
不正解。尿勢低下は排尿期症状に分類されます。前立腺肥大症による尿道抵抗増加や神経因性膀胱の排尿筋収縮力低下で生じます。尿流測定検査(ウロフロメトリー)で客観的に評価可能な所見です。
不正解。排尿遅延は排尿開始までに時間がかかる排尿期症状です。前立腺肥大症患者でよく観察され、尿道内腔の狭窄や膀胱頚部硬化が原因となります。蓄尿機能とは直接関連しません。
不正解。腹圧排尿は排尿時に腹筋を収縮させる行為で、排尿筋無力症や下部尿路閉塞に伴う代償機転です。排尿期の障害を示唆し、長期にわたると膀胱憩室や膀胱尿管逆流症を引き起こす可能性があります。
正解。夜間頻尿は蓄尿症状に含まれますが、多尿症(特に夜間多尿)や睡眠障害との鑑別が必要です。膀胱容量の減少(間質性膀胱炎など)でも生じ、高齢者では抗利尿ホルモン(バソプレシン)の日内リズム異常が関与する場合があります。