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日本医師国家試験113A30

62歳の男性。血尿を主訴に来院した。1週間前に家族から顔が黄色いと言われ、同時期に血尿に気付いた。3日前から尿の赤みが増し、倦怠感もあるため受診した。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。 脈拍 84/分、整。血圧 132/80 mmHg。眼瞼結膜は貧血様であり、眼球結膜に黄染を認める。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血 3+、沈渣でヘモジデリンを認める。血液所見:赤血球 176万、Hb 7.0 g/dL、Ht 19%、網赤血球 7%、白血球 7,800 (桿状核好中球 10%、分葉核好中球 70%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 12%) 、血小板 22 万、PT-INR 1.3 (基準 0.9〜1.1) 、APTT 37.7 秒 (基準対象 32.2)、血漿フィブリノゲン 377 mg/dL (基準 200〜400)、FDP 26 μg/mL (基準 10以下)、D ダイマー 9.7 μg/mL (基準 1.0以下)、アンチトロンビン 65% (基準 80〜130)。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 3.6 g/dL、総ビリルビン 8.2 mg/dL、直接ビリルビン 1.1 mg/dL、AST 35 U/L、ALT 28 U/L、LD 1,987 U/L (基準 176〜353)、ALP 234 U/L (基準 115〜359)、尿素窒素 29 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、血糖 84 mg/dL、Na 143 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 104 mEq/L。 この患者で予想されるのはどれか。

正解:e

AI解説

この症例は、溶血性貧血と血栓傾向を特徴とする病態を示しています。

主なポイント

  1. 溶血の証拠:Hb 7.0g/dLの高度貧血、網赤血球増加(7%)、LDの顕著な上昇(基準の5倍以上)、間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症が認められます。尿沈渣のヘモジデリンは血管内溶血を示唆します。
  2. 血栓傾向:PT-INR延長、APTT延長、FDP/Dダイマー上昇、アンチトロンビン低下からDICの状態が示唆されます。
  3. 診断の鍵:血管内溶血にDICを合併する病態として、発作性夜間血色素尿症(PNH)が疑われます。PNHではGPIアンカー蛋白欠損により補体に脆弱化した赤血球が破壊され、遊離ヘムが血栓形成を促進します。

鑑別の思考プロセス

  • 機械的溶血(弁膜症など)では破砕赤血球が出現するが、本症例では記載なし
  • Evans症候群では血小板減少を伴うが、本症例では血小板正常
  • DIC二次性の溶血では通常ヘモジデリン尿は目立たない
a

血管外溶血(脾臓などでの赤血球破壊)では、球状赤血球や脾腫が出現し、ハプトグロビンは比較的保たれます。本症例ではヘモジデリン尿とLDの極端な上昇が血管内溶血を示すため不適切です。

b

球状赤血球は遺伝性球状赤血球症など血管外溶血で見られます。本症例で認められるヘモジデリン尿や高度LD上昇とは矛盾し、血管内溶血を示唆する所見が主体です。

c

網赤血球7%の増加から、骨髄の赤芽球はむしろ増加していると考えられます。赤芽球減少は再生不良性貧血など骨髄不全で見られ、本症例の病態と反します。

d

ハプトグロビンは血管内溶血で急激に消費され低下します。上昇する場合は急性期反応(炎症など)が考えられますが、本症例の溶血状態では生理的反応として低下が予想されます。

e

GPIアンカー蛋白欠損赤血球はPNHの特徴的所見です。補体攻撃に対する脆弱性により血管内溶血が生じ、遊離ヘムがプロテアーゼ活性を亢進させDICを引き起こします。本症例の溶血パターンと凝固異常を最もよく説明します。